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労働者派遣労使協定方式をわかりやすく|
作成方法やポイント、基礎知識も

2023年4月14日

令和2年4月の労働者派遣法の改正により、派遣労働者への同一労働同一賃金が適用となりました。「均等均衡方式」や「労使協定方式」という言葉はだいぶ馴染んできたかと思いますが、これらは同一労働同一賃金の考え方を派遣労働者の給与決定に反映させる方法です。とくに「労使協定方式」は、実務上採用されている事業所様が多いことでしょう。

「労使協定方式」の導入から今日まで、労使協定の内容はブラッシュアップされてきました。しかしながら、事業所様によっては労使協定の形式が当初のままになっており、労働局から指摘を受けるケースも多いようです。

ここでは、「労使協定方式」についてご説明するとともに、労働局の指導を受けやすい箇所についても触れていきます。

労使協定の方式

「均等均衡方式」と「労使協定方式」の違い

労働者派遣法による同一労働同一賃金の適用には、「均等均衡方式」と「労使協定方式」の2種類があります。「均等均衡方式」は、派遣先の給与水準をヒアリングし、その結果を給与に反映させる方法。一方「労使協定方式」は、厚生労働省が毎年発表する職種別の「一般労働者の賃金水準」にあわせて給与を決定する方法です。

「均等均衡方式」は、派遣先従業員の給与水準を派遣先企業が変わるたびに確認する必要があります。同じ仕事内容であっても派遣先が変わると給与額も変わるため、派遣労働者の給与水準も安定しません。

そのため、職種と地域が同じであれば派遣先が変わっても給与水準を一定にできる「労使協定方式」の派遣会社が圧倒的に多いようです。

労使協定方式のメリット・デメリット|ポイント①

労使協定方式の場合、派遣先に関わらず本人のキャリアに応じた待遇を受けられるため、収入が安定します。ただし、一般労働者の平均賃金が基準となるため、派遣先の待遇が著しく良い場合など、同じ企業で働くスタッフとの格差が生じるケースがあります。

均等均衡方式のメリット・デメリット|ポイント②

均等均衡方式の場合、派遣先の正社員と同様の待遇を受けられるメリットがあります。しかし業務内容は同じでも派遣先の企業によって待遇が変わるため、派遣先が変わるたびに待遇に変動が起こることがデメリットです。

「労使協定方式」の現状と指摘されないためのチェックポイント

「労使協定方式」の導入後、内容は少しずつブラッシュアップされてきました。通達等により法律の運用も補強され、厚生労働省が公表しているサンプルにも反映されています。

しかし残念なことに、当初公表された労使協定をそのまま使い続けてしまい、労使協定の内容が不十分な状態になっているケースが見られます。法改正以降、労働局の派遣事業者への定期検査等が増え、労使協定の不備が指摘されるケースも増加したのです。
 

不備のないよう、以下のポイントを確認しておきましょう。

  • 労使協定に最新の法令や通達の内容が反映されているか
  • 労使協定の内容自体が実態と合致しているか
  • 給与が労使協定の水準をクリアしているか
  • 通勤交通費や退職金相当額をきちんと反映しているか
  • 労使協定の取り交わし方が適切か(労働者代表の選定方法など)

 
さらに雇い入れ時と派遣時、派遣労働者に対して、つぎのような書面を交えて説明を行っているかどうかを確認されることも多いようです。

労使協定の作成方法

派遣業にかかる労使協定の作成は、下記の手順にて行います。

【手順】

  1. 労使協定の当該年度の賃金水準を、最新の局長通達で確認
    毎年8~10月頃、翌年度に適用する「同種の業務に従事する一般労働者の賃金水準」が、厚生労働省職業安定局長通達(以下、「局長通達」または「通達」)として公表されます。この通達で職種・経験年数ごとの給与水準や地域指数、通勤費単価や退職金相当もあわせて、確認しましょう。
  2. 通達の内容を、労使協定に反映(給与水準が通達以上になっているか確認)
    労使協定の賃金水準は「別表」にしているケースが多く「別表」の更新を行なった場合、本文の更新を忘れがちです。本文中の通達名・通達日の記載も忘れずに修正を行いましょう。
  3. そのほか自社内の扱いで変更があれば、それらも反映
  4. 作成した労使協定を、労働者代表と締結
    労働者代表の選出は事業主側の恣意ではなく、公正な方法で行いましょう。

 

派遣業にかかる労使協定は、三六協定と違い労働局等への事前届け出の必要はありませんが、6月の労働者派遣事業報告には写しを添付しなければなりません。

労使協定の有効期間は2年以内です。その間、労使協定上の給与水準が通達の水準と同等程度であれば、毎年、給与額等の表を変更する必要もあります。

労使協定上の給与水準が局長通達より高いケースでも、給与水準が通達の内容より上回っていることを確認し、6月の派遣事業報告時に「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書」を添付する必要があります。

そのため、1年更新とした方が運用しやすいかもしれません。
ご参考:労働者派遣法第30条の4第1項の規定に基づく労使協定イメージ【厚生労働省】

労働者派遣事業は運営にあたっての決まりごとが多いため、正しく運用しているつもりでも細かい点を見落しがちです。労使協定の締結時や派遣事業報告準備の都度、あらためて確認するとよいでしょう。

  

【ご参考】

同一労働同一賃金とは|労使協定方式の基礎知識① 

「同一労働同一賃金」とは、同じ企業の中で、通常の労働者(正社員等)と短時間労働者・有期雇用労働者(派遣労働者含む)との間の不合理な待遇差をなくすための制度です。

同じ仕事をして同じ結果を出し、同様の経験・能力などを有し、責任の程度も差はないのに、短時間労働者や有期雇用労働者と通常の労働者の間に基本給、賞与その他待遇について不合理な差をつけることが禁止されています。

事業主は、不合理な待遇差とならないように改善策を実施したり、改善に努めたりしなければなりません。そして、事業主は労働者から待遇差について説明を求められたときは、待遇差の内容や理由を説明する義務があります。

労使協定方式での賃金の決定方法|労使協定方式の基礎知識②

労使協定方式での賃金の算出方法は、厚生労働省が毎年発表する職種別の「一般労働者の賃金水準」により決定します。対象の職種の職種別平均賃金に地域指数を乗じた金額を最低額として従業員の賃金を決定します。通勤交通費や退職金を支給しない場合、平均給与に通勤交通費相当額、退職金相当率を加算する必要があることにも注意が必要です。

協定対象派遣労働者とは|労使協定方式の基礎知識③

「協定対象派遣労働者」とは、派遣元と労使協定を結んだ派遣労働者のことを指します。

「同一労働同一賃金」を実現し、派遣労働者の公正な待遇を確保するために施行された改正労働者派遣法において、派遣元は派遣労働者の賃金などの待遇について、労使協定方式か、均等均衡方式のいずれかを選択することが義務付けられています。

「協定対象派遣労働者」は、上記2つの方式のうち、「労使協定方式」における派遣労働者が対象となります。

 

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