使用者は、採用に際して、賃金、労働時間その他の労働条件をはっきりと労働者に示さなければなりません。そのうち賃金・労働時間・修行場所・業務内容など一定事項については、書面に記載し、労働者に渡さなければなりません(労基法第15条)
育児・介護休業は事業所の規則の有無に関わらず、また事業主の許可を条件とすることなく、対象となる労働者が事業主に「休業申出書」を提出することによって、休業を取得することができます。
また、育児・介護休業及びこの看護休暇を申しでたこと又は取得したことを理由に解雇すること、減給や正社員からパートタイマーへの身分変更等不利益に取り扱うことは、法律で禁止されています。
育児休業 | 介護休業 |
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<育児休業>
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<介護休業> |
使用者が労働者を解雇する場合には、少なくとも30日前に解雇の予告をしなければなりません。また、解雇予告は、解雇の日を特定しなければなりません。なお、予告期間の日数計算は、翌日から起算します。
30日前に解雇の予告をしない使用者は、予告に代えて、30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。この解雇予告手当は、支払った日数分、予告日数の短縮が可能です。例えば20日後に解雇したい場合には、10日分の解雇予告手当を支払えばよいこととなります。
必ずしも支払わなくていいというわけではありません。
監督もしくは管理の地位にある者(いわゆる管理監督者)(労基法第41条2号)は一般的には、部長、工場長等がこれに当たると思われます。しかし、管理監督者とは、労働条件の決定その他労務管理について、経営者と一体的な立場にある者の意であり名称にとらわれず、実態に即して判断すべきであるとされています。具体的には、以下の基準をもとに総合的に判断することになります。
したがって、企業が人事管理上あるいは経営政策上の必要性から任命する職制上の役付者であれば直ちに認められるというわけではありません。重要な職務と責任を有し、現実の勤務態様も実態を判断して、労働時間等の規制になじまないといえる者に限られます。
管理監督者に該当したとしても、深夜業に対する割増賃金、有給休暇は与えなければなりません。
配置転換(配転)は労働契約書や就業規則に、その旨が記載されて、法令に違反していないなら、一般的には配転命令は通常の人事権の範囲内と考えられます。
ただし、配転命令権の乱用(労働契約法第3条第5項)や法令違反になる場合もあります。例えば、入社するときに職種や勤務地を特定して契約している場合、その変更を伴う転勤や異動は、労働者の同意がなければ、使用者が一方的に実施することはできません。
配転を行う際には、就業規則等、配転理由、業務上の必要性等を明確におく必要があります。
雇い止めの予告が必要な場合があります。
使用者は、有期労働契約を更新しない場合は、少なくとも契約の期間が満了する日の30日前までにその予告を労働者にしなければなりません。
ここで対象となる有期労働契約とは・・・・
※あらかじめ更新しない旨が契約時に明示されている場合は除きます。
使用者は、雇止めの予告後に労働者が雇止めの理由について証明書を請求した場合は、遅滞なくこれを交付しなければなりません。また、雇止め後に労働者から請求された場合も同様です。
契約期間の満了とは別の理由とすることが必要です。
例えば…
使用者は、契約を1回以上更新し、かつ、1年を超えて継続して雇用している有期契約労働者との契約を更新しようとする場合は、契約の実態及びその労働者の希望に応じて、契約期間をできる限り長くするように努めなければなりません。
労働基準法は、「制裁の定めをする場合」には、その種類と程度を就業規則に定めておかなければならないこととしています。
このことを、就業規則に制裁に関する定めをしていない場合には、従業員がどんな不正行為をしようとも、制裁処分の実施が認められないととらえがちですが、必ずしもそうではありません。
具体的な定めがなくても、社会通念上許容される範囲内において、制裁処分の実施は認められるものと考えられています。
ただし、この場合でも労働基準法には違反した状態に変わりありませんので、それを解消するためにも、また、今後に不良行為等が発生することを未然に防ぐためにも、就業規則に制裁の程度と種類等について、定めておく必要があるでしょう。
給与の改定は、就業規則に基づいて行うもので、就業規則の定めが「会社は、毎年1回4月に社員の給与の見直しを行う」などと、昇給、据え置き、降給、いずれのパターンも想定した定め方とされている場合には特別な問題はありません。この場合には、「業績不振のため、今年は、全員の日給額を改定しない(据え置く)」旨を従業員に通知するだけでも良いでしょう。
しかし、「昇給は、毎年1回、4月に行う」などと、昇給することを前提とした定め方をしている場合には、就業規則違反となる可能性があります。もし、就業規則が校舎のような定めになっていて、それでも日給額を据え置かざるを得ないのであれば、従業員の同意を得る必要があります。この場合、日給額の据え置きが雇用を維持するためにはやむをえない措置であることなど、昇給できない理由とともに、今後の見通し等についても十分説明し納得してもらう必要があります。
なお、就業規則を作成していない事業場などで、これまで慣行的に、毎年、いくらかずつでも必ず昇給している場合に、日給額を据え置くときには、その事情などについても、同様に扱う方が良いでしょう。
賞与は、本当に恩恵的に支給される場合を除き、「賃金」として扱われます。
通常、その支給要件は、就業規則に定められ、「支給日在籍要件」がつけられるのが一般的です。しかし、就業規則がない場合等、労働基準法にも賞与に関する定めがありませんので、過去の判例等から判断することになります。
過去の判例では「賞与支給日前に退職した労働者につき、支給日在籍を要件とする慣行の存在を認め当該賞与の受給権を有しない」としたものがあります。
過去の支給で在籍していない社員に賞与を支払ったことがないなどの要件がそろっていれば、支給しなくでも問題ありません。ただ、就業規則さえ、きちんと整備されていれば、多くの時間と労力を使わなくて済むようになります。