「社会保険」と一口にいっても、広い意味で使用される場合と狭い意味で使用される場合とでその範囲が異なります。
広い意味で使用される場合には、労災保険(労働者災害補償保険)、雇用保険、健康保険、厚生年金保険などを総称して社会保険といいます。
狭い意味になりますと、「社会保険」とは、社会保険事務所が取り扱う「健康保険(介護保険含む)」と「厚生年金保険」のことをいいます。
「労災保険」と「雇用保険」は総称して「労働保険」といいます。
はい。株式会社や有限会社などの法人は加入が義務付けらています。ただし、労働保険と社会保険とでは、その適用範囲が異なります。
労働保険は、労働者が1人でもいれば加入しなければなりませんが、役員のみの場合は加入の必要がありません。これに対し社会保険は、役員のみで従業員がいない場合でも加入しなければなりません。
※個人事業の場合は、業種や規模によって異なります。
労働保険の適用 | 労働者5人以上 | 労働者5人未満 |
---|---|---|
法人 (株式会社・有限会社など) |
○ 強制 | ○ 強制 |
個人事業 (農林水産の事業) |
○ 強制 | △ 任意 |
個人事業 (上記以外) |
○ 強制 | ○ 強制 |
社会保険の適用 | 労働者5人以上 | 労働者5人未満 |
---|---|---|
法人 (株式会社・有限会社など) |
○ 強制 | ○ 強制 |
個人事業 (農林水産の事業) |
△ 任意 | △ 任意 |
個人事業 (上記以外) |
△ 任意 | △ 任意 |
労働保険は、事業主も労働者も安心して働くことができるために必要な保険です。労働保険は、農林水産の事業の一部を除き、法人・個人を問わず労働者を一人でも雇っている事業主は必ず加入しなければいけません。この労働者にはパートやアルバイトも含みます。
労働保険には「労災保険(労働者災害補償保険)」と「雇用保険」の2つの保険があります。
それぞれの保険給付は、労働基準監督署と公共職業安定所(ハローワーク)で個別に行われますが、保険料の申告納付については両保険を一体のもとして取り扱います。
労働者が仕事中や通勤中にケガや病気をしたとき、または亡くなったときに労働者やその遺族を保護するために必要な給付を行います。
給付の種類 | 内容 |
---|---|
取得 | 利用目的の特定・通知等、本人確認などが必要 |
療養(補償)給付 | 治療や診察を受けられます。 |
休業(補償)給付 | 賃金が受けられない場合に、休業の4日目から「給付基礎日額」(平均賃金)の6割が支給されます。なお、特別支給金として2割が上乗せ支給されます。 |
傷病(補償)年金 | ケガや病気による療養を開始してから1年6ヶ月を経過しても治らない場合に、年金が支給されます。 |
障害(補償)給付 | 障害が残っている場合に、障害の程度に応じて年金又は一時金が支給されます。 |
介護(補償)給付 | 傷病(補償)年金や障害(補償)給付を受給し、現に介護を受けている場合に、その要した費用が支給されます。 |
遺族(補償)給付 | 死亡した場合に、遺族に対して年金や一時金が支給されます。 |
葬祭料(葬祭給付) | 葬祭を行った者に対して支給されます。本来の給付のほか、労働福祉事業の一環として保険給付金に加算される特別支給金の制度もあります。 |
労働者が失業してしまった場合や定年後の再雇用などによって給与が下がってしまった場合あるいは育児や家族の介護のために会社を休んで給与がもらえなかったときなどに労働者を援助するために必要な給付を行います。
給付の種類 | 内容 |
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求職者給付 | 被保険者が失業した場合に、生活の安定を図り休職活動を容易にするために支給されます。雇用形態により給付内容は異なります。 |
就職促進給付 | 再就職を促進するために支給されます。 |
教育訓練給付 | 主体的な能力開発を支援するために支給されます。 |
遺族(補償)給付 | 死亡した場合に、遺族に対して年金や一時金が支給されます。 |
雇用継続給付 | 高年齢者や育児介護休業取得者の職業生活の円滑な継続を援助、促進するために支給されます。 |
労働保険は労働者を1人でも雇ったら加入しなければなりません。
もし事業主が労働保険の手続を怠っているときに、労働者が仕事中にケガをしてしまったらどうなるのでしょうか? その場合、事業主はまず納めていなかった保険料とその年度分の保険料と追徴金を払うことによって労働保険に入ることができます。
ただし、手続をしていなかったときに発生した労災事故で保険給付が行われたときは、その保険給付の全額または一部を事業主が負担をすることになります。
労働保険に加入するには、まず所轄の労働基準監督署またはハローワーク(公共職業安定所)に労働保険の保険関係成立届を提出します。そして、その年度分の労働保険料を概算保険料として申告納付することになります。
雇用保険に加入する場合は、この他に所轄のハローワーク(公共職業安定所)に「雇用保険適用事業所設置届」と「雇用保険被保険者資格取得届」を提出しなければなりません。