2023年6月26日
近年「くるみん」という言葉を耳にされることが増えているのではないでしょうか?「くるみん」とは、従業員の仕事と育児の両立支援に取り組む企業が「子育てサポート企業」として厚生労働大臣に認定された証であり、認定基準に応じた「くるみん」マークが付与されます。
くるみんマークを取得すると子育てサポートを行っている企業であると広く世間に認知されるため、企業のイメージアップが図れるほか、公共調達に参加する際の加点といった恩恵も受けられるのです。
ここでは、くるみんの概要から認定要件・申請方法まで解説いたします。
くるみんマークとは「子育てサポート企業」として一定の認定基準を満たした企業に、厚生労働大臣から与えられるマークです。認定マークには「くるみん」「プラチナくるみん」「トライくるみん」の3種類があり、不妊治療サポートのために制度を策定し運用することで認定される「プラス認定」もあります。
また「くるみん」の愛称には、赤ちゃんを優しく包む「おくるみ」と「会社ぐるみ」で子育てをサポートするという、2つの意味が込められています。
「くるみんマーク」の取得には、次のようなメリットがあり、一定規模以下の事業所においては、助成金や低利融資を受けられる場合もあります。
「くるみんマーク」を取得すると、企業の商品・広告・広報物などにマークを付けることが可能です。自社ウェブサイトや求人広告にも「くるみんマーク」を掲載できるため、「子育て世代に優しい企業である」と社内外へのアピールになります。そのため、子育て世代をはじめとした若い世代や優秀な人材の確保にもつながるでしょう。
「くるみんマーク」を取得している事業所は、ワーク・ライフ・バランス推進企業として、公共調達において加点があります。ただし、すべての案件が対象というわけではありません。具体的な配点等は案件によるため、詳しくは個別の調達案件の問合せ先にご連絡ください。
くるみん認定を受けた企業は、助成金の支給や優遇が受けられます。
常時雇用する労働者数が100人以下の企業(一般事業主行動計画の届出義務がない企業)が、一般事業主行動計画を届け出た場合。もしくは、くるみん認定を受けた企業が一定の要件を満たした場合、日本政策金融公庫より「働き方改革推進支援資金(企業活力強化貸付)」の融資を特別利率で受けられます。
参考サイト:働き方改革推進支援資金(日本政策金融公庫)
くるみん認定を受けるには、厚生労働省の指針に沿った2~5年の行動計画を策定し、実行しなければなりません。そのため、くるみん認定の申請は計画期間の終了後となり、計画策定から認定まで数年かかります。ここでは、くるみん認定までの手順を見ていきましょう。
厚生労働省の示す「行動計画策定指針」に沿って、仕事と子育ての両立に関する行動計画を策定します。計画の策定には、自社の現状調査や従業員へのヒアリングなどが重要です。従業員のニーズなどもしっかり把握した上で、自社にあった行動計画を策定しましょう。また、この計画は、2~5年の期間で設定する必要があります。
参考サイト:一般事業主行動計画の策定・届出について(厚生労働省)
策定した「一般事業主行動計画」は、社内外に公表・周知する必要があります。社外への公表は、自社ウェブサイト等でもよいのですが、厚生労働省の「両立支援のひろば」での公表がおすすめです。なぜなら、「両立支援のひろば」における実施状況の公表が、認定条件となるものがあるからです。
また、社内への周知はイントラネットへの掲載のほか、メールや回覧などの方法も挙げられます。いずれの場合も、公表・周知した日がわかる資料を保存しておきましょう(ハードコピー等)。計画終了後、くるみん申請を行う際に必要となります。
策定した一般事業主行動計画は、策定からおおむね3か月以内に、都道府県労働局の雇用環境・均等部(室)に届け出ます。常時雇用する労働者が101人以上の事業所については、計画策定・届出は義務となっています。
策定した一般事業主行動計画を実施に移します。実施中は、従業員に周知すべきことがいろいろ出てくると思いますが、その都度、周知した日にちと内容等がわかる資料をとっておくようにしましょう。計画終了後、くるみん申請をする際に必要となる場合があります。
またウェブサイト「両立支援のひろば」に、女性従業員の育児休業取得率および自社独自の育児目的休暇制度について、実施状況を定期的に公表する必要もあります。
計画期間終了後、計画の実施内容を「くるみん認定基準等」に沿って測定し、いずれかのくるみんマーク認定基準に合致したら、申請を行います。申請には多くの確認資料が必要となるため、パンフレットを確認の上、準備を行いましょう。
くるみんマーク取得後も、育児休業に関する自社の実施状況を「両立支援のひろば」に定期的に掲載しなければなりません。これを怠ると、せっかく取得した「くるみんマーク」が取り消される可能性もあります。
マークの取得には定められた認定基準があり、くるみんマークの取得には10個、プラチナくるみんマークの取得には12個の認定基準をクリアする必要があります。ここでは、くるみんマークを中心に認定基準を列挙していきます。
(1) 雇用環境の整備について、行動計画策定指針に照らして適切な行動計画を策定した
(2) 行動計画の計画期間が、2年以上5年以下である
(3) 策定した行動計画を実施し、計画に定めた目標を達成した
(4) 策定・変更した行動計画について、公表および労働者への周知を適切に行っている
(5) 次の1.または2.のいずれかを満たしている
(6) 計画期間中の女性労働者の育児休業等取得率が75%以上である。
尚、くるみんの場合は、この割合を「両立支援のひろば」で公表している必要あり
(7) 3歳以上の未就学児を育てるすべての労働者に対し、以下の制度や措置を講じている
(8) 下記のa・bのいずれも満たしている(除く:退職者)
a. フルタイム労働者等の法定時間外・法定休日労働時間の平均が、ひと月あたり45時間未満である
b. 月平均の法定時間外労働が60時間以上となる労働者がいない
(9) 次のa~cのいずれかの措置について、具体的な目標を定めて実施している
(プラチナくるみんはa~cのすべてを導入し、さらに、aまたはbのいずれかについて定量的な目標を設定・達成している必要がある)
a. 所定外労働を削減のための措置(ノー残業デー、フレックスタイム制活用等)
b. 年次有給休暇を取得促進するための措置(年次有給休暇の計画的付与等)
c. 短時間正社員制度、在宅勤務、テレワーク等、多様な労働条件を整備するための措置
(10)重大な法令違反がない
(11) 次のいずれかを満たしている ※プラチナくるみんのみ
(12) 育児休業を取得もしくは育児中の女性労働者が、就業を継続し活躍できるような能力向上策やキャリア形成支援のための取組みを計画し、実施している ※プラチナくるみんのみ
従業員の子育てサポートに加え、不妊治療のサポートを行っている企業が下記の要件を満たした場合、くるみんマークに「プラス」マークが付与されます。
(1) 次の制度を設けている
a. 不妊治療のための休暇制度(年次有給休暇は含まない)
b. 不妊治療のために利用できる次のいずれかの制度
・半日単位や時間単位の年次有給休暇
・所定外労働の制限
・時差出勤
・フレックスタイム制
・短時間勤務
・テレワーク
(2) 不妊治療と仕事の両立に関する方針・講じている内容を、労働者に周知している
(3) 不妊治療と仕事の両立に関する労働者の理解促進のため、研修などの取組みを実施している
(4) 不妊治療を受ける労働者からの相談に応じる担当者(両立支援担当者)を選任し、労働者に周知している
「くるみん」「トライくるみん」「プラチナくるみん」のいずれにおいても、認定が不適切と認められた場合にはマークが取り消されます。(以下は一例)
取り消された場合、3年間は再取得できません。しかし新たに計画をスタートさせることは可能です。
なお、プラスマークの認定基準のみ適合しなくなった場合は、プラスマークは取り消されますが、くるみんマークまでは取り消されません。
これまで見てきたとおり、くるみん認定を受けるには多くのハードルはありますが、認定を受ければさまざまなメリットがあります。なにより、子育て世代が働きやすい環境を整えるためのよい道しるべとも言えますので、トライしてみる価値はあるでしょう。
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