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労務問題同一労働同一賃金とは

2021年10月24日

2020年4月から先行して大企業へ適用された『同一労働同一賃金』は、本年4月より中小企業にも適用となり、いよいよ本格的にスタートしました。
そもそも『同一労働同一賃金』は、同一企業内におけるいわゆる正規雇用労働者(正社員など)と非正規雇用労働者(有期雇用労働者、パートタイム労働者、派遣労働者など)の間の不合理な待遇差の解消を目的として導入されました。
また、不合理な待遇差の解消の取組を通じて、どのような雇用形態を選択しても納得出来る処遇を受けられ、多様な働き方を自由に選択できるようにするという目的もあります。
『同一労働同一賃金』は、正社員と比較した場合に、パート・有期雇用労働者に対する待遇面での不合理な格差を禁止する原則ですが、現在の日本の会社では、まだまだ「正社員」を優遇する考え方が残っており、不合理と判断される可能性がある待遇差も存在します。

個別の待遇については、これまでの裁判例などから判断基準について徐々に明確になってきたところですが、まだまだ対応に迷う部分も多いと思います。
ここからは、実務において「具体的に何をすればよいか」、また「要注意規程」や「待遇に関する説明義務」について解説していきます。

具体的に何をすればよいか

1. パート・有期雇用労働者と正社員との待遇を総チェック

まずは待遇を総チェックし実態の把握を行います。
ここでいう『待遇』とは、就業規則などの各種規程類だけでなく、就業規則には載せていない慣習として行っている待遇なども含め、すべての待遇についての確認が必要になります。
ちなみに、派遣労働者については、原則的には『派遣先正社員』の待遇と比較しますが、一定の要件を満たす労使協定を締結した場合は、例外として『派遣元正社員』の待遇と比較することが認められています。(労使協定方式)

2. 点検・確認すべき待遇は?

パート・有期労働法第8条および第9条では、『基本給、賞与その他の待遇のそれぞれについて』という表記ですが、上記にも記載の通り『すべての待遇』が対象となります。
均衡・均等待遇の対象は、基本給、賞与に加えて、住宅手当や家族手当などの各種手当のほか、福利厚生、教育訓練、休日・休暇制度など、あらゆる待遇が対象になります。

3. 待遇の性質・目的は何か?

その待遇は『何のための待遇・何のための対価』なのかということを、あらためて確認することが必要です。
待遇の目的によっては、正社員とパート・有期雇用労働者の間で差を設けることは不合理と判断される場合もあります。
(例:通勤手当は「自宅から職場までの通勤にかかる費用の補助」が目的であり、正規・非正規にかかわらず支給の対象となり得るため、支給・不支給の差があることは不合理)

要注意規程

次に、就業規則等の中でありがちな規定とその注意すべきポイントを解説します。

1.『家族手当』

正社員対してのみ支給すると規定している例も見受けられますが、パート・有期雇用労働者について、『相応に継続的な勤務』が見込まれる場合は、不合理と判断される可能性が大きくなります。

この『相応に継続的な勤務』については、これまでの裁判例や学説などから『5年』が目安と考えることができますが、すべての事案に必ず当てはまるとは言い切れません。目安としてご理解ください。

2.『住宅手当』

この規定も正社員対してのみ支給している例が見受けられますが、住宅手当については『転居を伴う配置転換の有無』によって不合理となるかどうかの判断が分かれる傾向にあります。
正社員とパート・有期雇用労働者のどちらにも転勤がないのに手当支給に差を設けている場合は、不合理となる可能性が大きくなります。

3.『夏季特別休暇』

この規定も正社員対してのみ休暇を付与すると規定している例が見受けられますが、夏季特別休暇の付与の目的が「心身の回復を図る」ことである場合、この趣旨は正社員とパート・有期雇用労働者のどちらにも当てはまると言えますので、休暇付与に差を設けている場合は不合理となる可能性が大きくなります。
ただし、①勤続の期間、②所定労働時間数・所定労働日数、③時間外労働・休日労働の有無など、そもそもの労働条件の違いによっては、不合理とならない場合もあり得ます。

4.『定年再雇用にかかる給与』

定年退職後の基本給について、定年時と比べて減額するという例は一般的に多くみられますが、定年前後の『職務の内容(業務内容+責任の程度)』が同じであり、『職務の内容及び配置の変更の範囲』も同じである場合は、60%を下回る減額は「労働者の生活保護」という観点で不合理となる可能性があります。
定年時と定年再雇用後の基本給の待遇差については、違法と判断した裁判例は今のところまだ少数に限られていますので、今後の裁判の動向を注視していく必要があります。

待遇に関する説明義務

「待遇に関する説明義務」は、パート・有期労働法第14条第2項において、義務として規定されています。
事業主は、パート・有期雇用労働者から「正社員との待遇差の内容や理由」について説明を求められた場合は、待遇に関する説明をしなければなりません。
また、この説明を求めたパート・有期雇用労働者に対して、不利益な取扱いをすることは禁止されています。
この説明について厚生労働省のマニュアルでは、『資料を活用して、口頭で説明することが基本』としているので、必ず書面の交付をしなければならないというものではありませんが、『説明すべき事項を全てわかりやすく記載した文書を作成した場合は、当該文書を交付する等の方法でも差し支えない』ことになっており、また書面の準備があった方が、説明がスムーズにできるでしょう。
引き続き説明書面の作成のポイントについて説明します。

ポイント1:『比較対象者』を誰にするか

誰との待遇差を説明するかは、パート・有期雇用労働者と職務の内容等が「最も近い」比較対象労働者を『事業主』が選ぶことになっています。
「職務の内容(業務内容+責任の程度)」 と「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同じ正社員がいない場合は、政府が示す下記の①から④の順位に従って、比較対象者を選びます。

①「職務の内容」は同一であるが、「職務の内容及び配置の変更の範囲」は同一でない正社員(無期雇用フルタイム労働者)
②「職務の内容」のうち、「業務の内容」、「責任の程度」のいずれかが同一である正社員(無期雇用フルタイム労働者)
③「職務の内容及び配置の変更の範囲」が同一である正社員(無期雇用フルタイム労働者)
④「職務の内容」、「職務の内容及び配置の変更の範囲」のいずれも同一でない正社員(無期雇用フルタイム労働者)

ポイント2:個別の待遇について、相違が『不合理ではない』ことが必要

待遇に関する説明は、待遇全体についてではなくて、「基本給なら基本給」「住宅手当なら住宅手当」とそれぞれについて待遇差を説明できるようにしておく必要があります。
「全体」や「総額」での比較は、その他の事情として考慮しますので、例えば複数の待遇を関連付けて決定している場合は、それらを総合して決定した待遇であるという説明が必要になります。