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労働者派遣労働者派遣事業のあらまし

2021年10月24日

労働者派遣事業とは「派遣元事業主が雇用する労働者を、派遣先の指揮命令を受けて、この派遣先のために労働に従事させることを業として行うこと」とされています。
労働者派遣といえば「登録型派遣」(派遣会社への登録者のうち、派遣先が決まった者と派遣先との契約期間ごとに有期雇用契約を結ぶもの)が浮かびますが、正社員であっても取引先の指揮命令下のもとに働く場合は労働者派遣となります。この場合は「常用型派遣」といわれます。
いずれも、派遣労働という労働形態の特殊性から、労働者派遣事業は厚生労働省の許可を得て行うことが大前提となっており、それにより遵守事項も多くなっています。

労働者派遣事業の対象業種

労働者派遣事業は、基本的に派遣先での長期間の就業を想定するものではなく、また職務や労務管理上の責任の所在があいまいになりやすい等の特殊性から、一部の業務において労働者派遣は認められていません。認められていない業務(適用除外業務)は次の通りです。
・港湾運送業務
・建設業務
・警備業務
・病院・診療所等における医療関連業務
・いわゆる「士業」(弁護士、税理士、管理建築士等)の業務(一部の業務を除く)

また、日雇派遣は原則として認められませんが、例外的に下記の場合のみ認められています。
〇日雇い派遣の例外業務(ソフトウェア開発/機械設計/事務用機器操作/通訳・翻訳・速記/秘書/ファイリング/調査/財務処理/取引文書作成/デモンストレーション/添乗/受付・案内/研究開発/事業の実施体制の企画・立案/書籍等の制作・編集/広告デザイン/OAインストラクション/セールスエンジニアの営業・金融商品の営業)
〇60歳以上の派遣労働者
〇雇用保険の適用を受けない学生(昼間学生)
〇年収500万円以上で副業として日雇派遣に従事する者
〇世帯年収の額が500万円以上の主たる生計者でない者

同一労働同一賃金との関係

近年、法の整備が進んでいる「同一労働同一賃金」ですが、労働者派遣事業には、中小企業に先駆けて適用されました。
「同一労働同一賃金」は、文字通り「同じ労働には同じだけの賃金を支払うべき」という考え方ですが、労働者派遣事業においては、雇用主(賃金の支払い元)と就業先が違うという特殊性から、直接雇用の非正規労働者(契約社員・アルバイト等)と同じようにこの考え方を当てはめることが難しく、また派遣先に同じ業務を担当する労働者がいるとも限りません。

そこで、労働者派遣法により「均衡・均等方式」と「労使協定方式」という2つの方法が定められました。

「均衡・均等方式」は、派遣先の同様の業務を行う従業員(「比較対象労働者」といいます)の賃金と同水準の賃金を保障する、という方法です。この方法をとる場合、派遣先から、比較対象労働者の賃金額を聴取する必要があります。

「労使協定方式」とは、賃金構造基本統計調査による職種別の平均賃金(毎年夏以降、局長通達として発せられます)をもとに派遣労働者の待遇を決定し、それについて労使協定を締結することにより、各人の賃金額を決定する方法です。派遣先への賃金情報提供依頼の難しさ、派遣先が変わるたびに賃金額が変わってしまう不安定さから「均衡・均等方式」ではなく「労使協定方式」をとる場合がほとんどのようです。
なお、教育訓練や福利厚生に関しては、いずれの場合も、派遣先の従業員と同様に付与する必要があります。

※賃金構造基本統計調査による職種別の平均賃金(令和4年適用分)

抵触日等

派遣期間には、一定の上限が設けられています。これを「抵触日」といい、派遣先の事業所単位のものと派遣労働者個人単位のものと2種類あります。これらは、それぞれ「3年」が限度となっています。

事業所単位の抵触日は、派遣先事業所が注意すべきものとなっており、最初に派遣労働者を受け入れてから3年を経過する日がそれにあたります。この場合の抵触日は、派遣元事業所(派遣会社)がどこであるかにかかわらず、初めて派遣労働者を受け入れてから、ということになります。そのため、3年の途中で派遣会社が変更となった場合、変更後の派遣会社は3年を待たずに事業所単位の抵触日を迎えることになります。

ですが、事業所単位の抵触日は、その1ヶ月前までに労働者代表の意見聴取を行うことにより更新されます。そのため、事業所単位の抵触日の更新手続きを怠らなければ、派遣先事業所はいつまででも派遣労働者を受け入れることが可能となります。

対して、個人単位の抵触日は、派遣労働者各人について「3年」という制限を設けたものです。派遣労働者個人は、同じ派遣就業先では3年を経過する日までしか働けない、という制限ですが、この「同じ派遣就業先」とは同じ事業所というわけではなく、同じ事業所内でも部署が変われば引き続き同じ派遣労働者が働くことができます。ただし、同じ派遣労働者が3年の途中で違う派遣会社に移籍し、引き続き同じ派遣先で働く場合は(あまりないこととは思いますが)移籍前後の派遣期間が通算されます。

ただし、下記の場合は例外的に抵触日が適用されません。
・有期プロジェクト業務に従事する場合
・産前産後休業・育児休業・介護休業を取得する労働者の代替の場合
・日数限定業務(派遣先の通常の労働者の月の所定労働日数の半分以下、かつ10日以下の日数で発生する業務)に従事する場合
・無期雇用労働者の場合
・60歳以上の派遣労働者の場合

運用にあたっての手続き

労働者派遣業の運用にあたっては、様々な書類を調える必要があります。

この項では、労働者派遣業の運用にあたって必要な書類を列記します。

<労働者を派遣するとき>

〇派遣元・派遣先間

・労働者派遣基本契約書
派遣元・派遣先間で、労働者派遣を行う旨の基本的な事項についての契約書です。
法定のものではないため、作成するか否かも含め自由ですが、作成しておくのが一般的です。

・労働者派遣個別契約書
派遣する労働者ごとに、法定の具体的な労働条件等を定める「個別契約」を締結します。
・派遣先への通知書
派遣元から派遣先へ、派遣する労働者の氏名、社会保険加入の有無、対象派遣労働者であるか否か等、法定の事項について通知します。

・事業所抵触日の通知
派遣先から派遣元へ、事業所単位の抵触日を通知します。

〇派遣元・派遣労働者間

・労働条件通知書
派遣先から派遣労働者へ、法定の労働条件を通知します。

・就業条件明示書
派遣先から派遣労働者へ、法定の派遣契約に関わる事項を明示します。

<備え付け義務のある書類等>

〇派遣元管理台帳
法定の事項について管理台帳を作成し、備え付ける義務があります。
(同様に、派遣先は「派遣先管理台帳」の備え付け義務があります)

〇労使協定(労使協定方式の場合)
労使協定方式をとる場合、少なくとも2年に1回労使協定を締結し、備え付ける義務があります。
◎その他、関係者向けに、マージン率等の情報公開義務があります。

<各種報告・届出>

○労働者派遣事業報告
毎年6月に労働局に提出します。
6月時点での直近年度中の実績報告および6月1日現在の労働者数等の報告を行います。
労使協定方式をとっている場合は、労使協定の写し、労使協定の有効期間に職種別の平均賃金が変更された場合は「協定対象派遣労働者の賃金の額に関する確認書」の添付が必要です。

○労働者派遣業収支決算書
毎年事業年度末より3ヶ月以内に労働局に提出します。
指定様式に決算書(貸借対照表、損益計算書)を添付して提出するのが一般的です。

○関係派遣先割合報告書
毎年事業年度末より3ヶ月以内に労働局に提出します。
年間の派遣労働者の実績(労働時間)、関連会社等への派遣実績等を報告します。

◎その他、事業所の所在地・名称の変更、事業主や役員、派遣元責任者の交代、氏名変更、住所変更等があれば、その都度変更手続きを行います。

以上のとおり、労働者派遣事業の開始・運営にあたっては、様々な制約や報告義務等、遵守すべき事項が数多くあります。また、ここ数年は同一労働同一賃金と関連した法改正により、報告書関係がたびたび変更となっています。労働者派遣事業の運営にあたっては、常に労働者派遣法の動向を注視する必要があります。