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法改正情報2024年4月、労働条件明示のルール改正

2023年5月24日

2024年4月1日より労働基準法が改正となり、労働契約の締結時・更新時の労働条件明示事項に新しい項目が追加されます。労働者を雇い入れる際、必ず書面で明示しなければならない事項(絶対的明示事項)がありますが、今回のルール改正は、それに追加する形となるのです。

追加事項は4点。主となるのは有期契約労働者向けの項目ですが、正社員等の無期契約労働者向けの追加項目もあるため、労働形態にかかわらず確認しておく必要があります。

労働条件明示のルール改正

ここでは、2023年5月時点の情報をもとに解説してまいります。

「絶対的明示事項」のおさらい

追加項目のご説明の前に、労働条件の「絶対的明示事項」について、あらためて確認しておきましょう。

「絶対的明示事項」は労働基準法第15条で定められており、労働条件のうち次に挙げる項目は、必ず書面で労働者に明示しなければなりません。

データをPCに入力している女性
  • 労働契約期間
  • 労働契約を更新する場合の基準
  • 就業場所・仕事の内容
  • 労働時間・残業・休憩・休日・休暇に関する内容
  • 給与の詳細・計算方法・支払日・支払方法についての内容
  • 退職・解雇事由と手続きの方法

短時間労働者には、上記に加え下記の項目も書面で示す必要があります(パートタイム労働法第6条)。

  • 昇給の有無
  • 退職手当の有無
  • 賞与の有無
  • 相談窓口(担当者名、役職、担当部署など)

提供方法は、書面によるものが原則です。しかし労働者本人が希望するのであれば、受信者が特定できる通信手段を確保でき(第三者に情報が伝わらない)、明示内容を出力して書面が作成できるのを条件に、FAXやメールによる提供も許可されています。

改正により追加される項目

2024年4月の改正により追加される明示事項は、次の通りです。

<すべての労働者に対する明示事項>

 

1. 就業場所および担当業務に関する変更範囲の明示

現在、労働契約の締結時や有期雇用契約の更新のたびに、雇入れもしくは更新時点の就業場所と担当業務の内容を明示していることと思います。

ルール改正後はそれに加え、将来の配置転換等で変わり得る就業場所・担当業務の範囲まで明示しなければなりません。

 

<有期契約労働者>

 

2. 更新上限の明示

有期雇用契約の締結時もしくは契約更新時に、更新上限(通算契約期間または更新回数の上限)の有無と、その内容(具体的な期間や回数)の明示が必要となります。

ただし、その雇用契約が通算何年目であり何回目の更新であるかの明示までは、求められていません。

 

3. 無期転換申込機会の明示

有期雇用契約には、「無期転換ルール(5年ルール)」というものがあります。これは有期雇用契約が5年を超えて締結・更新した場合、その契約期間中の有期雇用労働者からの申し出(申込み)により、契約期間終了日の翌日から期間の定めのない雇用契約(無期雇用契約)に転換されるものです。

ルール改正により、申込みができる権利(無期転換申込権)が生じたタイミング以降、契約更新のタイミングごとに無期転換が申し込める旨を明示する必要があります。

たとえば、無期転換申込権が最初に発生したときに無期転換を希望せずに引き続き有期契約を結んでいたとしても、契約更新のたびに無期転換の申込ができる旨を明示しなければならないのです。

無期転換ルールについて(厚生労働省)

無期転換の申請権発生タイミング
4. 無期転換後の労働条件の明示

無期転換申込権が生じる更新のタイミングでは、3.の「無期転換申込機会の明示」とあわせて、無期転換後の労働条件も明示する必要があります。

たとえば、無期転換申込権が発生した最初のタイミングで無期転換を希望せず、引き続き有期契約を結んだ場合でも、契約更新のたびに無期転換をした場合の労働条件を明示しなければなりません。無期転換をした場合の労働条件が変更となる場合は、別途、労働条件を記した書面の提示が必要です。しかし労働条件に変更がないようであれば、その旨を労働条件明示書に記載するだけで足ります。

今回の改正と直接の関係はありませんが、「就業規則による」と記載した場合は、就業規則を確認できる場所や方法の明記が必要となりました。就業規則等の社内規程は、本来、従業員が自由に閲覧できるようにすべきものです。しかし、実際そのように運用されていないケースも多いため、今回の明示事項の追加を機に明確化されました。

改正後の労働条件明示書イメージ(厚生労働省)

 

 

ここまでご説明したとおり、労働条件明示のルール改正により、労働条件明治書面の整備が求まられるようになります。施行日までに、以下のことを行っておきましょう。

  • 労働条件通知書の整備
  • 有期契約労働者の契約更新回数、通算期間等の再確認
  • 無期転換ルール(5年ルール)が適用される有期契約労働者の再確認

労働条件明示書の不備は、トラブルが起きた時に会社が不利になったり労基署の調査で指導対象になったりするリスクはもちろん、労働条件が不明確なため、人事制度等の運用に支障が出ることもあります。さまざまなリスク回避のため、労働条件明示書の整備は必須です。

厚生労働省では、わかりやすいリーフレットを公開しています。ぜひあわせてご確認ください。

2024年4月から労働条件明示のルールが変わります(厚生労働省)

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